ツァラトゥストラは何を語りき — 被害者意識からの脱却を

今回は『ツァラトゥストラはかく語りき』をご案内します。「ツァラトゥストラはかく語りき」と聞けば、2001年宇宙の旅にも冒頭部が使われたリヒャルト・シュトラウスのあの交響曲を思い浮かべる人が多いと思われます。

しかし、原作はニーチェによる小説形式ともとれる著作です。ニーチェはそれまで欧州で信じられていた「キリスト教的(=形而上学的)な」価値を否定し、それを「神は死んだ」という一言で形而上学の卓袱台返しを行った人です。

ニーチェはこれまでの形而上学を否定するだけではなく、ツァラトゥストラの口から新しい価値基準を人類に与えようと試みています。比喩的な話が多く、誰が誰に喋っている会話なのかわかりにくいので、やや難解ではありますが、主題は明確なので、全体を押さえておけば理解できないことはありません。

ニーチェはここでは「被害者意識から脱却して、その産物たる神に頼るのは止めよう、自分自身で前向きになって悦びを見つけ、それに向かって進め。」と号令している感じです。

ここの主題である被害者意識の脱却というのは現代でも最も大きなテーマです。多くの人が大なり小なり抱えている被害者意識がなくなれば、世の中はもっとみんなにとって生きやすくなると思います。ニーチェの言葉に相変わらず人気があるのはこういうところなのでしょう。

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